早く気づけ、バカ。
次の日。
智治とは一度も目を合わせていない。
「なぁ、絹。」
「絹ー?」
「絹ちゃーん???」
全部無視した。
目を合わせると
心が弾むから。
しゃべると
きっとまた
好きになっちゃうから。
好きが募ってしまうから。
ここまで来たのなら
いっそ嫌われてしまおう。
嫌われて嫌われて、うらまれたほうがいい。
全部、
智治との思いでも
壊しちゃおう。
思い出せないほど、遠くへ飛ばしてしまえたらいいのに。
放課後。
「なぁ、絹って!!!」
智治が私の前に立ちふさがり、
私をまっすぐ見つめてくる。
でも
私は君の顔も、
見ることはできなかった。
うつむいたまま、
下を向いていることしかできなかった。