文字降ル空【BL/短編】
「お前のこと、本気で好きだった」
「…うん。気をつけてな」
「今でも好きだ。たぶん、この先、ずっと」
振り切るように出て行ったあの体温も、背も、あの言葉も。忘れられない。
風の便りでヤのつく男に気に入られたのを知ってから、俺の中はあいつへの心配ばかりだ。
友人からもらった薬を、また1つ、食べる。
窓の向こう。車はワイパーを動かし、通行人は傘をさしている。
『今でも好きだ。たぶん、この先、ずっと』
ガラス越しに見上げた空からは、その文字が。
バラバラと絶え間無く。
俺目掛けて、降ってくる。
あの声はもう忘れてしまった。再生できるのは、体温だけだ。
だから だろうか。