Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「男子が産まれたと聞いたぞ。身体は大丈夫か?」

 ジェイムズが荒々しくベッドに腰を下ろすと、ジョーンの身体を抱きしめた。湿った息がジョーンの耳にかかり、気持ちが悪い。

 ケインが静かに部屋を出て行くのが見えた。ドアが閉まると、ケインの姿が見えなくなった。

「ええ。私は平気よ。子供も元気な産声をあげていました」

「そうか! 余は本当に嬉しいぞ」

 ジェイムズが鼻息を荒くして頷いた。

 初めての男子誕生に、ジェイムズも嬉しいのだろう。頬を赤くして、話始めた。唾を何度か飛ばしては、必死にジョーンに語りかけてくる。

 昨日の夕方から陣痛を耐え、夜も眠らずに双子を産んだジョーンは、急に眠気が襲ってきた。

 話をしているジェイムズの話を聞こうと、懸命に瞼を持ち上げているが瞬きと同時に、ジョーンは眠りについてしまった。
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