Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
一四三〇年六月五日。午前十一時。
ジョーンの部屋に洋服屋を呼びつけていた。六月十八日に予定されている息子の誕生パーティに着るドレスの試着をする予定だった。
すでに双子の一人が命を落としていた。
生まれたときから、細くて鳴き声も小さかった赤ん坊が、生後数時間で心肺停止状態になり、亡くなった。もう一人の赤ん坊は、元気に育っていると耳にしている。
産んでから一度も顔を見ていないが、乳母がきっちりと面倒を見ているだろう。
我が子を抱き、愛したいが我儘は言えない。ジョーンはジェイムズⅠ世の子を産む道具であり、それ以上の期待はされていない。
見知った顔の洋服屋店主のリジー夫人が大きな籠を床に置いた。あの中に注文しておいたドレスが入っているのだろう。
夫人はシェープな顔立ちと手足がすらりと長かった。
いつもは赤いドレスを頼んでいた。今回は気分を変え、青いドレスにしてみたのだった。深みのある鮮やかな青色だった。一目見て気に入った色だ。
どんなふうに仕立てあがったのか。ジョーンは楽しみだった。
ジョーンの部屋に洋服屋を呼びつけていた。六月十八日に予定されている息子の誕生パーティに着るドレスの試着をする予定だった。
すでに双子の一人が命を落としていた。
生まれたときから、細くて鳴き声も小さかった赤ん坊が、生後数時間で心肺停止状態になり、亡くなった。もう一人の赤ん坊は、元気に育っていると耳にしている。
産んでから一度も顔を見ていないが、乳母がきっちりと面倒を見ているだろう。
我が子を抱き、愛したいが我儘は言えない。ジョーンはジェイムズⅠ世の子を産む道具であり、それ以上の期待はされていない。
見知った顔の洋服屋店主のリジー夫人が大きな籠を床に置いた。あの中に注文しておいたドレスが入っているのだろう。
夫人はシェープな顔立ちと手足がすらりと長かった。
いつもは赤いドレスを頼んでいた。今回は気分を変え、青いドレスにしてみたのだった。深みのある鮮やかな青色だった。一目見て気に入った色だ。
どんなふうに仕立てあがったのか。ジョーンは楽しみだった。