Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
(何を着ても、同じ台詞を言うのよ)

 ジョーンはわかりきったリジーのお世辞に、鼻で笑った。

「ドレス、気に入ったわ。流石ね」

「王妃陛下のお褒めのお言葉に感謝します」

 リジーが、ジョーンの横で深々とお辞儀をした。ジョーンはエレノアに向かって手を出した。エレノアがジョーンの左側に近寄ると、小袋を渡した。

 ジョーンは小袋から金貨五枚取ると、リジーの手に握らせた。

 ジョーンは笑顔をつくった。リジーの顔が花咲いたように明るくとなると、手に持っていた金貨を胸の谷間に押し込んだ。押し込めるほど肉厚がある胸に、ジョーンは羨ましく思った。

「ケインとウイリアムの意見を聞きたいわ。呼んで頂戴」

 エレノアが返事をすると、ドアを開けて廊下で待っているケインたちに声をかけた。

 ケインとウイリアムが部屋の中に入ってきた。リジーが、籠を持って頭を下げると小走りで廊下に出て行った。

 ジョーンの新しいドレス姿を見ても、ケインとウイリアムの表情が変わらなかった。

 どう? と、ジョーンは回転して見せても、何も言わずにジョーンのドレス姿を見ているだけだった。
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