Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「雨の中の散歩も、時にいいですよ」

　ケインは足を止めると、身体ごとダグラスに向けた。どうしてもケインを外に出したいようだ。その意図は何なのか。

　ケインはダグラスの目を見つめた。相変わらず眉毛は太かった。茶色だった眉毛も、今は、もう白くなっている。

　ダグラスの表情は明るい。悪戯を思いついて、ケインを驚かせようとしているウイリアムの顔にそっくりだ。

　ケインは頷くと、エドワードを見た。玄関ホールに置いてあるコートと帽子を着ると、ケインはダグラスと一緒に外に出た。
　　　　　　　　




　エドワードがドアを開けると、玄関前に三人の男が並んで立っていた。

　ケインの顔を見た男たちは、深々と頭を下げた。ケインは真ん中に立っていた男に視線を奪われた。

　ケインの後ろでは、玄関の扉が静かに閉まる音が聞こえた。

「ロバート・グレイアムですよね？　逮捕されたと聞いていますが」

　ケインは隣に並んで立ったダグラスに、質問した。ケインとダグラスの後ろには、ダグラスの従者が、下を向いて立っていた。
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