Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 二人の計らいで、少しばかり会える時間ができたと話すと、ケインが嬉しそうに微笑んでくれた。

「陛下とお話できる機会があって嬉しく思います。ちょうど、お話ししたい内容があったので」

 ジョーンは顔をあげてケインの瞳を見つめた。青い瞳から笑みが消え、影が宿った。

「二月二十一日に、暗殺を決行したいと思います」

(ジェイムズの暗殺ね)

 ジョーンの心臓が早鐘を打った。七年前に、ジェイムズの暗殺を任せるように、ケインに言われて以来の会話だった。

 あれから何度も会って、身体を重ねていたのに、一度も話にあがらなかった。他愛ない話を沢山してきたが、暗い話は一切、ケインから持ち出されなかった。

 ジョーンはケインの頬に右手を触れた。
        
 二月二十一日は、グレイフライアーズ修道院にジェイムズと一緒に行く予定になっていた。

 エディンバラ城にジョーンを残して出かけるのすら、とうとうジェイムズが嫌になったのだ。

 王妃の警護としてケインも従いて行くのが決まっていた。

「心配しないでください。僕が手を下すわけではありません。殺したいほど怨んでいる者に機会を与えるだけですから」

 ジョーンは言っている意味がわからず、ケインの目を見つめ続けた。ケインの目が優しくジョーンの姿を捉えていた。
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