Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
―ケインSIDE―
一四四〇年1月二十日。午後二時。
ケインはエディンバラ城の書斎で、本棚を横目に早歩きしていた。六万平方フィートある部屋には書物以外にも、絵画や彫刻などがあちこちに飾られていた。
ここ数日、外は雪が降り続いていた。
外に出て身体を動かせないケインは、体力が落ちないように書斎を歩いたり、階段の上り下りを繰り返したりして、体力づくりをしていた。
大広間で騎士団と一緒に身体を動かす時もあった。もともとケインは身体を動かすのが好きだった。
薄暗い部屋でケインの横を、同じようにゼクスも歩いていた。
ケインの歩調に合わせて、ゼクスの足も動く。足音は、まるで一人の人間歩いているように重なって聞こえていた。
二人の腰についている剣の足にあたる音が、微妙にずれて二人の人間が歩いているとわかった。
室内には、ケインとゼクスの二人がいるだけだった。
「いくつかの目撃情報があり、調べに行きましたが、全て空振りでした。他にもダグラス家所有の城や屋敷も調べましたが、どこも潜伏した形跡はありません。ダグラス家の親類にも助けを求めている事実もありません」
ゼクスが口調は早かった。早歩きしているせいか、足音のリズムに乗って出てくる言葉も早くなっているようだった。
一四四〇年1月二十日。午後二時。
ケインはエディンバラ城の書斎で、本棚を横目に早歩きしていた。六万平方フィートある部屋には書物以外にも、絵画や彫刻などがあちこちに飾られていた。
ここ数日、外は雪が降り続いていた。
外に出て身体を動かせないケインは、体力が落ちないように書斎を歩いたり、階段の上り下りを繰り返したりして、体力づくりをしていた。
大広間で騎士団と一緒に身体を動かす時もあった。もともとケインは身体を動かすのが好きだった。
薄暗い部屋でケインの横を、同じようにゼクスも歩いていた。
ケインの歩調に合わせて、ゼクスの足も動く。足音は、まるで一人の人間歩いているように重なって聞こえていた。
二人の腰についている剣の足にあたる音が、微妙にずれて二人の人間が歩いているとわかった。
室内には、ケインとゼクスの二人がいるだけだった。
「いくつかの目撃情報があり、調べに行きましたが、全て空振りでした。他にもダグラス家所有の城や屋敷も調べましたが、どこも潜伏した形跡はありません。ダグラス家の親類にも助けを求めている事実もありません」
ゼクスが口調は早かった。早歩きしているせいか、足音のリズムに乗って出てくる言葉も早くなっているようだった。