Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
一四四三年五月一四日。午後五時。
ケインはエディンバラ城の塔に足を運んでいた。牢獄となっている塔にいるウイリアム・ダグラスに会うためだ。
ケインを先頭に、ベアトリクス、ゼクスの順で歩いた。
ベアトリクスは五代ダグラス伯の娘で、ウイリアムの婚約者だった。ベアトリクスに、ウイリアムに会わせてやると手紙を送ったら、すぐにエディンバラ城に来たのだ。
牢獄塔の入り口には、体格が大きい男が入口を塞ぐように立っていた。ケインの姿を見た大男が、まるでドアが動くように身体を避けて、入口部分を開けた。
牢獄塔には異臭が漂っていた。血の臭い、肉の腐った臭い、人間の体臭など。ケインの顔は臭いで顔が歪んだ。
短時間で済ませて、牢獄塔から退却したい。汚い空気を吸うだけでも、身体が汚染されそうだ。
迷路のようになっている塔内を、ケインは迷わずに歩いた。
右に曲がったり、左に曲がったりを繰り返した。足を止めるなり、鉄格子の向こう側で項垂れ座っている男を眺めた。
長いぼさぼさの髪が顔を隠していた。袖口から見える腕が、細かった。皮と骨だけなのか? と思ってしまうほどだ。
ケインはエディンバラ城の塔に足を運んでいた。牢獄となっている塔にいるウイリアム・ダグラスに会うためだ。
ケインを先頭に、ベアトリクス、ゼクスの順で歩いた。
ベアトリクスは五代ダグラス伯の娘で、ウイリアムの婚約者だった。ベアトリクスに、ウイリアムに会わせてやると手紙を送ったら、すぐにエディンバラ城に来たのだ。
牢獄塔の入り口には、体格が大きい男が入口を塞ぐように立っていた。ケインの姿を見た大男が、まるでドアが動くように身体を避けて、入口部分を開けた。
牢獄塔には異臭が漂っていた。血の臭い、肉の腐った臭い、人間の体臭など。ケインの顔は臭いで顔が歪んだ。
短時間で済ませて、牢獄塔から退却したい。汚い空気を吸うだけでも、身体が汚染されそうだ。
迷路のようになっている塔内を、ケインは迷わずに歩いた。
右に曲がったり、左に曲がったりを繰り返した。足を止めるなり、鉄格子の向こう側で項垂れ座っている男を眺めた。
長いぼさぼさの髪が顔を隠していた。袖口から見える腕が、細かった。皮と骨だけなのか? と思ってしまうほどだ。