Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「バハン伯は今まで何をしても、国王軍に加勢しなかった。強盗を装って人質をとっても、だ。国王軍を恨んでおり、ブラック家の信用もある。その関係を少しでも、ぐらつかせれば」

 ケインは願った。バハン伯とダグラスの間に、亀裂が入ってくれれば、士気が下がり、崩れやすくなるのではないかと。

「信頼関係が深いほど、裏切られた反動は大きい。絶対に成功するさ」

 チャールズが勝気な目で口を開いた。

「さすが兄弟、息がぴったりだ」

 ゼクスが茶化した。チャールズがゼクスを見て、恥ずかしそうに頭を掻いた。

「私はチャールズほど、悪戯好きじゃない」

「悪戯とは失礼だな。パフォーマンスと言ってほしいよ」

 チャールズが不貞腐れた。場の空気が、柔らかくなった。張りつめた雰囲気が消え、エドマンドやレッド家のジェームズとジョージの緊張した身体が解れた。

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