Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 椅子の前まで来ると、ジョーンは振り返って部屋にいる貴族たちを見渡した。

 ジェイムズが簡単に挨拶の言葉を述べた。ジョーンは笑顔で全員を見ると、話し終えたジェイムズと一緒に椅子に腰を下ろした。

 ジョーンとジェイムズの間に小さなベッドが用意され、娘のジョーンが寝かされた。ぐっすり眠っている娘の顔を見て、ジョーンの心は癒された。

 大広間の扉が執事によって閉められると、楽団の軽快な音楽が流れてきた。それに合わせて部屋の中央では、貴族たちが男女で手を取り合ってダンスを始めた。

 ジョーンはジェイムズの横顔を見た。ジェイムズがジョーンの視線に気がついたようだ。横を向くと、ジョーンの顔を見つめてきた。

 ジョーンの妊娠をきっかけに、ジェイムズの女遊びが目につくようになった。今、ジェイムズが気になっているのは、レティアなのだろうか。

「私も踊りたいわ。身体を動かしたいの」

 ジェイムズが立ち上がり、ジョーンに手を差し出してきた。
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