Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 エレノアとローラが出て行って間もなく、ケインがノックをして部屋に入ってきた。

 ジョーンは振り返ってケインと目を合わせると、自然と笑顔になった。ケインも微笑んでくれた。

 ケインが足早に近づいてくると、軽いキスをしてから、ジョーンの隣に座った。ジョーンはケインの腕に絡みついた。ケインの体温がジョーンの肌に伝わってきて気持ちが良い。

 火のついている暖炉を見つめながら、ケインに身体を預けた。

「ケインから見て、レティアはどう映っているの?」

 ケインがジョーンの顔を見た。ジョーンも暖炉から、ケインに視線を動かした。

 ケインが優しい瞳でジョーンを見ていた。ケインが左手を持ち上げると、ジョーンの頭を撫でた。

 ジョーンはケインの言葉を待ってみたが、返事をする気配がなかった。

「小柄で清楚で、可憐で。思わず守りたくような女性に見えるのかしら?」

 ジョーンはさらに質問を重ねた。ケインの唇がジョーンの額に触れた。ケインがジョーンの額にキスを落とした。

「人の好みによって見方や感じ方は違ってくると思います。僕には、清楚で可憐な女性には見えません」

(ケインの言葉、真意と受けとっていいの?)

 嘘をつくような人じゃない。たとえ落ち込んでいても、気休めを言って慰める人でもない。
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