Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ケインは思った通りに発言をする。

 わかっているが、ジョーンから見たレティアが、若さ溢れる可愛い女性なせいか、不安が心を占拠していた。

 レティアがケインを気にしているのかもしれない。ジェイムズより断然、魅力的な男性だ。

 ジョーンを王妃から蹴落とすために、ケインを利用しようと考えている可能性だってある。レティアの魅力で虜にして、ケインが利用される。

(ケインがレティアを抱くなんて、考えたくないわ)

 ジョーンはケインの腕に強くしがみ付いた。

「エレノアやローラから、話を聞けたのですか?」

 ケインの滑らかで透き通る声が、ジョーンの身体に染み込んでいく。

「聞けたわ。負けたくないって思った。ジェイムズがレティアに夢中になってくれているのは嬉しい。でもレティアには負けるのは嫌だわ」

 ジョーンはケインから離れると、ソファを立った。鏡台の横にある窓際まで歩くと、壁に寄りかかった。

「私の言葉、矛盾しているわね。でも真実よ。レティアには負けたくないの」

 振り返るとジョーンはケインに、微笑んだ。ケインも立ち上がると、ジョーンに近づいてきた。
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