Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
―ケインSIDE―
一四二九年一月二十七日。午後四時。
ケインはエディンバラ城から馬で三十分の場所にあるリンリスゴーの屋敷にいた。騎士になり、王妃とともにスコットランドに来た際に、いただいた領地だった。
ケインにとって、せいぜい月に十日いるかいないかの屋敷だが、数人の執事やメイドが綺麗に手入れをしていた。
とくに優秀なのが、家令のエドワード・クリスだった。
ケインは屋敷の書斎にいた。
一八〇平方フィートの部屋には、机とソファとテーブルがこぢんまりと置いてある。
絨毯やソファは青色で統一され、机とテーブルは焦げ茶色だった。一見、重苦しそうに見える部屋だけれども、ケインには落ち着ける空間だった。
ケインは椅子に腰を掛けて、机の前のソファに座っているブラック家のジェームズ・ダグラスを見ていた。他人を見定めているわけではないが、警戒をしていた。
ダグラスがブレア城からの帰りで、今日中にダグラス城に戻れそうにない。帰路の途中にケインの屋敷があり、一晩泊めて欲しいというのでケインの屋敷に入れたのだった。
真冬のスコットランドは、すぐに太陽が大地の下に隠れてしまう。午前九時すぎに外が明るくなった思えば、午後三時には陽が暮れてしまうのだった。
今、ケインの目の前にいるジェームズ・ダグラスは三代ダグラス伯アーチボルト・ダグラスの息子で、年齢は五十八歳だ。
ダグラスの兄が四代目を継ぎ、現在は兄の家系が継承し、六代ダグラス伯ウイリアムがダグラス城の当主だった。
ダグラスの前妻はベアトリクスで、父親がオールバニ公ロバートだった。オールバニ公ロバートといえば、マードックの父親だ。
一四二九年一月二十七日。午後四時。
ケインはエディンバラ城から馬で三十分の場所にあるリンリスゴーの屋敷にいた。騎士になり、王妃とともにスコットランドに来た際に、いただいた領地だった。
ケインにとって、せいぜい月に十日いるかいないかの屋敷だが、数人の執事やメイドが綺麗に手入れをしていた。
とくに優秀なのが、家令のエドワード・クリスだった。
ケインは屋敷の書斎にいた。
一八〇平方フィートの部屋には、机とソファとテーブルがこぢんまりと置いてある。
絨毯やソファは青色で統一され、机とテーブルは焦げ茶色だった。一見、重苦しそうに見える部屋だけれども、ケインには落ち着ける空間だった。
ケインは椅子に腰を掛けて、机の前のソファに座っているブラック家のジェームズ・ダグラスを見ていた。他人を見定めているわけではないが、警戒をしていた。
ダグラスがブレア城からの帰りで、今日中にダグラス城に戻れそうにない。帰路の途中にケインの屋敷があり、一晩泊めて欲しいというのでケインの屋敷に入れたのだった。
真冬のスコットランドは、すぐに太陽が大地の下に隠れてしまう。午前九時すぎに外が明るくなった思えば、午後三時には陽が暮れてしまうのだった。
今、ケインの目の前にいるジェームズ・ダグラスは三代ダグラス伯アーチボルト・ダグラスの息子で、年齢は五十八歳だ。
ダグラスの兄が四代目を継ぎ、現在は兄の家系が継承し、六代ダグラス伯ウイリアムがダグラス城の当主だった。
ダグラスの前妻はベアトリクスで、父親がオールバニ公ロバートだった。オールバニ公ロバートといえば、マードックの父親だ。