口吸い【短編集】




「サト兄ちゃんどしたの?具合悪い?」

その声に意識が呼び覚まされたようで、気付けば心配層に紀美花が下から見上げていた。


本当に驚かせたかっただけらしく、意識が戻ればちゃんといつもの適切な距離で俺の前に回り込んできた。



「きっと桜のせいだね」


「桜?」


「そう、桜マジック。こんなに晴れているのに魂抜けたサト兄ちゃんなんて初めてみたよ。私、普段しっかりしてるサト兄ちゃんしか見たことないもん」

そういえば紀美花の前ではいつも気を張っていた。

それを見透かされていたような気がして恥ずかしくなる。


「そういえば春に卒業式あるからみんな告白とかしちゃうのかな。ポカポカだし、桜は祝福してるみたいだし。冬だったらなかなか思わないよね」


桜が落ちてる、と俺から離れてそこに向かった紀美花を見て、ダブる。



____まぁさ、ちょい複雑だけど頑張ってほしいのさ、サト兄ちゃん。











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