口吸い【短編集】
初めて会ったときそれはそれは爽やかな男だった。新成人特有の青臭さはいい意味でそれにコクを出していた。
だが。
粘りっこくて、執着心が旺盛で、狙った獲物は逃がさないその仕事スタイルで私はそのイメージを一変させたのだ。
狙われたのは私だ、と気付いた時には私は既に逃げ出してしまった。
冷蔵庫を開けるとミネラルウォーターと、水、オレンジジュースしか無かった。水でいいかと聞けば黙って頷いていた。
コポコポとグラスに注ぐ。
彼は私がこっちに来るとき漸く、視線を私に合わせた。