口吸い【短編集】

「ん……」 酷い頭痛に悩まされて起きて気が付いた。ベッドから降りて、寝ている彩花を起こさないように外に出た。


ガララ、とベランダの窓を開ける。
今日はお月様が綺麗だ。
真ん丸で、雲があっても霞むことさえ知らない。彩花の昨日の泣き顔がぽっ、と出てくる。

______あんたは自分を大切にしてよ


消えるような声だった。いつものハキハキした彼女ではなかった。そうさせたのは私だ。罪悪感でいっぱいになる。

腹を立てた何人目かわからない《元カレシ》が私を殴り付けた。そしてそのまま犯した、という。ピルを服用していたことが幸いした。

改めて考えなきゃいけないことがわかった。

私はどうしたいのだろう。
復讐なんてちっぽけなものじゃなかった。
きっと、私は___…。


ガララ、と音がした。そこにいたのは彩花の兄、健治だった。驚いたようにこっちを見ている。

「まだ起きていたのか」

手にタバコを持っている、吸いに来たのだろうか。




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