口吸い【短編集】
「眠れないの?」
くわえて、ジュッとライターから火をもらっている。
「いえ、今起きたところです……」
「そっか」
ふーーーと長い煙と息を吐き出した。その煙は、不愉快ではなかった。ランニングなんて今は寒いだろう。見てるこっちが寒くなる。
今は秋終盤、冬の準備をしているところだ。
思わず両腕を擦る。
ここからは沈黙タイムだった。でも気まずいなどと思ったことはない。それはきっと私がこの人をさほど警戒していないからであろう。むしろ委ねてしまいたい、心地よい静けさだ。
何時間そうしていたのだろう。
何時間も何も考えていなかった。
月が落ちてきたのを見た。もうすぐ朝だ。
…………ずっと傍にいてくれた。
たまらなくなって、本音をぶちまける。