口吸い【短編集】
初めて紀美花を見たときすっごく赤くなった頬見て、かわいいって思っただけだった。
真面目そうなリンゴホッぺの子、っていうおもしろい印象。
もしかしたら男に免疫なんてなかったのかもしれない。
記憶は曖昧で、抱きつかれた初めてなど覚えてもない。
いつのまにか覚えた化粧は緩い、ほんのりの女を彩って______。
「枝ごと落ちてて、でもすごく綺麗に残っていたからはい、卒業プレゼント」
近寄って同じようにしゃがみこめば、花が咲いた笑顔で渡されたのは___桜。
「ありがとう、嬉しい。____なぁ」
桜を見ると紀美花の言葉がちらついて、言いたくて言いたくて仕方がない。
「なぁに?」
疑問を浮かべた顔に手を伸ばしてわざと頬を触りながら、髪の毛を触った。
もつれもない綺麗な黒髪をすくようにして桜を落とす。
はらはらと落ちていく度に顔を俯かせる。
面白いくらいに頬を赤くする。
口をぱくぱくさせて、金魚みたいに。
俺が気付いてないとでも、思ったか?