口吸い【短編集】
「女に振られたくらいで荒れるような奴ではなかったんだ。その日はかなり荒れていた。振られた、っていうより愉快犯のような奴だったって。
でも、そいつ何て言ったと思う?酷いことされた、でもそうとは思えない。
俺が彼女の加害者としか思えない。ってな。わけがわからん、なんだそれはって思ったよ。
写真を見してもらったんだ。隠し撮りって言ってたけどな。
そしたら、目を疑った。
数年前見た元気で華やかだった、彩花の同期生だった。
一目でわかった。
でも、俺の知っている人ではなかった。
泣きそうで助けて、って叫んでるように見えた。
そして彩花に全部聞いた。」