口吸い【短編集】
「接触したのはそれから直ぐだった。また、泣きそうな顔をしていた。だから納得した。助けてあげたいって。」
「………………」
頭を撫でてくれた。大きなごつごつした掌が、髪の毛をくしゃくしゃに乱している。
「もう脅えなくてもいい、大丈夫だから」
上から、腰を折って顔を近づけてくる。
「ほらおいで」
両手を伸ばして抱き抱えてもらう。
今は同情でもなんでもいい。
抱き締めた背中は大きい。
唇に遊びのようなキスを落とされる。
私はこの人に落ちてしまった。
もう、それだけで、いい。
癒してくれる彼を信じようと思う。
end