口吸い【短編集】
10*絆創膏の独占欲*《太股、支配》
鏡に写った自分を見て、眉を寄せる。
赤い花弁が散りばめられたような所有印の数は尋常ではない。
上は首から、足は指先まで。
ちょっと、おかしいんじゃない?
あんたはたくさん《浮気》して帰ってくるくせに、私は他の男の人と話しするだけでも怒られるなんて。
イライラしていた夜、あの日はいつもとなく荒れた。
思い出すのは熱に浮かされたあの時間のことごとで。
シャワーを浴びている時だけが心休まる…
髪の毛を洗って、1つのゴムにまとめる。
体を上から洗って太股にたどり着いた時、違和感を感じた。
私こんなところに絆創膏貼ったっけ?
つけ根よりも下、内側の裏。
触ってみてわかったあの独特の感触を、ぺりっと剥がす。
[美弥は俺の]
絆創膏の表面に油性ペンで書かれた、支配宣言。
………………のぼせた。
今、顔、熱い。
がらり、と浴室の白い扉が横に開く。
獲物を狙うような鋭くて、欲を帯びたその目に、体が疼く。
「かっわい、りんごみてぇ」
「死ね!!」
end