口吸い【短編集】
他の奴にはそんなことしたとこなんて見たことない。
佐藤が愚痴るには普段なんて玄関まで迎えに来ない。
二年前、初めて知り合って。
サト兄ちゃんと言われてもそんな対象では見たことない。
それはお前もだろ?
桜マジックだ。いいだろ、便乗しても。
色んなものにガタがきて、二年だ。
もういーだろ?
すく手を止める。
「____顔あげろ」
ビクッとわかりやすく体が震えた。
おそるおそる上げた紀美花の顔は半分泣いていて、半分怯えていて、真っ赤に恥ずかしがっていた。
「顔、真っ赤。なんで?」
卑怯?
「え………?」
一種の手段だ。
「意識してんの?」