口吸い【短編集】
13*無愛想の意外性*《指先、賞賛》
「じゃあ、これと、それと。そのうさぎももらおうか」
そういって、鉄仮面が指差したのは____桃色のうさぎのぬいぐるみだ。私はきっと豆鉄砲を食らった鳩のように、阿呆な顔を曝している。
「どうした?」
「いえ、申し訳ありません」
表情が崩れて雲行きが怪しくなったので、さっさとうさぎやらくまやらぬいぐるみを手渡した。渡してから気付く。
「包装は………」
もしかしたら、子供のためのプレゼントかもしれない。かなり、お若いように見えるが子供がいてもおかしくない年齢に見えるからなんの問題もない。年の離れた弟や妹かもしれないし甥や姪の可能性だってある。
ただ、無表情に端正な顔だから、言いにくいがあまり似合っていない。
ぴしゃり、と顔付きに似合ったキツさで言い放つ。
「結構、では。」
あの人がこのフリーマーケットで私のぬいぐるみや編み物を買いに来て三回目、未だに謎である。