口吸い【短編集】
よく見知った顔で尚且つあの人じゃないことにホッとして、強ばってた表情が緩む。
「あれ、お前らなにしてんの?」
サッカーボールを抱え、首を傾けるその姿はワンコを想像できてかわいい。
「いや、さぁ。玉砕話しを聞いていてもらってたのさ」
はやく過去のことにしようと努めて明るくいっても心は軋んだ。
「玉砕?」
訝しげに彼は聞いた。そして私達の近くの椅子を引っ張り出して、足を組んで座った。
「え、あんた聞くの?」
「こんな出し惜しみみたいなこと言われて、興味を持たない方がおかしいよ」
聡子は納得して、目で私に舌打ちしてきた。
とても怖い。
私はやや、主観でさっき聡子に言ったことを話した。