口吸い【短編集】



「……へぇ」

聞き終わった彼はどことなく冷たくみえた。

「アイツ、中原と仲良かったからそんなこと言ったのかな。だとしても頭悪すぎだろ」

多分今頃どこかで八つ当たりでもしてるんじゃない? そう言った彼は微笑むものの、纏う空気は変わっていなかった。

聡子も彼がこんな風に反応すると思っていなかったが、-----突然、ニヤリと笑って立ち上がった。


「ね、福田君」

彼の名前は福田という。

「何?」

「私、今から用事あるからこの子の話聞いてあげてくれない?」

「は!?ちょ、聡子!」

この空気の中そういうことしちゃう!?

聡子はふっ、と口角だけつり上げて、手を振った。

「瑞穂、この人なら私みたいにあんたをいじめないわよ」

ーーーこの状況が私をいじめてるんだけど!、とそんなこと言えない。



< 73 / 98 >

この作品をシェア

pagetop