口吸い【短編集】
私の席の横に膝立ちになる。意味がわからなくてはてなマークをたくさん浮かべた。
「こっち向いて」 そう言われたから、体を向けて彼を見下ろせばーーーーなんだなんだこの甘ったるい雰囲気は。
「愛してるよ、俺のスイートストロベリーパイ」
目が離せなくて、釘つけになるしかできなくて。
「貴方のお腹はこんなにもチャーミングなのですね」
熱っぽい視線を切り替えられそこには私のお腹だ。まさかまさかまさか。
「こんなにもかわいらしいから、キスしてしまいたくなるほどだ……」
そう言って、お腹に顔を沈めてきた。
胸のしたに体温を感じて沸点が一気に上がる。
鳥肌が立ち、 私はおもいっきり両足を振り上げた。
「ギャーーーーー!!!」
見事に彼の腹にクリーンヒットした。
*
「な、あんたというやつは!破廉恥か!」
彼は蹴られて痛そうに腹を押さえている。
罪悪感が沸かないでもないが、これは正当防衛だ!出てる腹を触ろうとするなんて!
「再現しただけだよ、イタタタタ」
「え!大丈夫?」
苦痛に歪め、彼は鞄とってと言った。
「誰かさんのせいで怪我したんだから、治るまで面倒見てよ」
その言葉にぎょっと目を向く。
「え?!は」
「痛いなー痛いのになーこれでほったらかすとか、非情な人間だな」
なんでこんなことに………!
毎日一緒に帰るようになって鞄持ち。
もう、ほんとに、ふざけんなよおおおお!!
初恋はこの福田というやつであることも認めたくない。