口吸い【短編集】
「なにやってんの?」
彼の髪は細く、天然パーマだから絡みやすい。そこまでグリングリンしてないのに本当に不思議だった。彼はちょっと不機嫌だ。知ってる、私のせいだ。
「ごめんなさい…」
しかし、彼は横を向いたまままだしかめているのだ。
「謝ってもどうせやるでしょ」
なんてことだ。見破られている。
***
両手首を一纏めに掴まれて、「悪いのはこの手ですか?」なんて囁かれてきゅんきゅんする。私は下のかさついた合皮を背中で感じながら、彼を見上げていた。
この拘束されてる感じがたまらない。
私はこの人と出会うまでしっかり者としてやってきた。会うたびに砂糖をぶっかけられたような甘さのせいで、そんな私はいつの間にか姿形もなかった。
その性格のユルさが落ち着く。
くるくるパーマも愛らしくてかわいい。
骨々しい男らしい指のギャップにも萌える。
要するに。
「もう触んないでね。今からお仕置きするよ」
お粗末になっていた片手が、私の脇腹に落ちていく。
あ、やばい。
「え、待っ_____キャハハハハ、アハハ、もうやめてぇ!」
ドンピシャ好みだったのだ。妄想の具現化。
「ほら、さっさと言って。もうしませんって」
「やだやだやだっハハハ、ハハハ!!!」