口吸い【短編集】
そして少し眉を下げて子犬のように。
「望み薄いって知ってたけど、知ってたけど、俺だって一生懸命伝えたんだから聞いて欲しいっていうか。」
なにこの可愛い生き物。耳が垂れてる。ショボンしてる。え、鼻血。むしろ萌え。ギャップ萌え。
私はなにも言わなかった。頭の腐った部分が暴走する気がして。
「それ、本当に?」
力尽きたように頷いた。
ああ、可愛い。頷くだけとか。
さっきまで帰れとか言ってたけれど。
言ってたけれど!
むしろ帰したくない。
「いいよ」
「…………は?」
「恋人体験期間なら受け付けてあげる」
初めて異性として_____捕獲対象だと彼を認識したのはこの日だった。そして。
「だから、このポーズしてっていってるでしょ!」
「は?だから!剥くなっ!」
「ワイシャツ、半裸、最高!」
「このド変態め!」
ド変態万歳!
直ぐに脱がすとかとんでもない肉食系女子だわ。
おかげであの斎藤夕陽は残念なことに子やぎの如く震えている。
半泣きになってるから、あとでたくさん甘やかしてキスしてあげよう。キスマークもたくさん付けて。
彼、受けだし。
Fin