口吸い【短編集】
おまけ
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あなた様が酷く遠いので、私は切ない夜を幾度も越えて眠るのです。その度に幻影の貴方が現れて私に一言、お慕い申し上げておりますとだけ告げてまた朝を迎えにこさすのです。私は何年待ちましょうか。貴方はいつになったら私を幻影でなく、自身で私の手を取ってくれるのでしょうか。涙は果てがなく枯渇することも許さず、こぼれ落ちてしまうばかり。
私はもう、片時も離れたくないのです。
だから、口を吸って、私の魂を飲み込んでください。
私は貴方と一心同体でありたいのです。
私の残り僅かな命を、貴方に。
口吸い