あの頃より きっと。
彩穂は一瞬肩を揺らしたが、雷が何も言わずに抱き寄せているのを拒むことはなかった。

彩穂の頭が当たっている、雷の鎖骨が少し痛んだ。

それでも、こうしていないと彩穂が壊れる気がした。

抑えていないと、彩穂はどこかへ去るような気がした。





――今俺にできることは、これしかないから…





雷は彩穂の頭をしっかり支えて、何度も撫でた。
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