あの頃より きっと。
風磨がここにいる理由。

電話に出た相手。

全て、風磨の大切なあの子に関係しているのではないか。





「ん?だから待ってるって。ははっ、大丈夫だから」





風磨は笑顔で話していた。

その笑顔は、彩穂の大好きな笑顔だった。

ずっと近くで見ていられると思った、あの笑顔だった。

また涙が溢れそうになったが、今はこれ以上泣きたくない。

風磨が居る前では、意地でも泣かない。

彩穂はそう決心して、眉間に力を入れて目を閉じ、それから大きく見開いた。
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