あの頃より きっと。
彩穂が、ベンチに座っていた風磨に視線を戻した。

しかし、そこには座った風磨はいなかった。

あっという間に彩穂の横を通り過ぎて、あの笑顔で玲奈に近寄る。





「玲奈」





彩穂は、その声を聞いて耳を塞ぎたくなった。

風磨の柔らかい声が、玲奈の名前を呼んだのだ。

当たり前のことだ。

彼氏と彼女。

そんな関係になったら、名前で呼ぶのは当たり前のことだ。

でも、風磨が今までで名前で呼んでいた女子生徒は、彩穂だけだった。
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