あの頃より きっと。
事情
走り出した彩穂は、2人の姿が見えなくなる場所まで来て止まった。
涙を堪えながら、息を整えた。
しかし、部活で鍛えられただけの持久力はあった。
すぐに普通のリズムの呼吸に戻って、ただ意味もなく歩いていた。
そこは、店が立ち並ぶにぎやかな場所だった。
若者が多くて、中には柄の悪い『不良』と呼ばれる人間もいた。
髪の毛の色は見事な金髪で、ネックレスやピアスなどのアクセサリーを、大量に纏っている。
それでも、彩穂は去ろうという気になれなかった。
理由は、この気持ちを紛らわしたいためだった。
雑音が激しい場所にいれば、少しは落ち着くかもしれない。
そう思った。