あの頃より きっと。
どうして、わざわざ建物の陰に来たのかが理解できなくて、彩穂が雷に話しかけようとした時だった。
「…見てわかったと思うけどさ…俺、中学の頃ああいうことばっかりやってたんだ。殴ったり、殴られたりしてた」
その言葉は、紛れもなく雷の口から発されたものだった。
想像もできなかった。
まさか雷が、夜をこういったところで過ごしていたなんて。
しかし、信じなければならない。
彩穂は目を大きく見開いて、雷を見据える。
「そんなんだったから…こんな傷なんか痛くもないんだよな。だから…心配しないでほしい」
雷はそう言って切なく笑うと、整った眉が下がった。