あの頃より きっと。
プロローグ
「遅刻するってー!!」





宮岸彩穂は、目の前の背中をバシバシと叩いた。

この道は、比較的人が少ない。

交通に厳しいおばさんに注意されることもないし、見回りをしている警察にだって見つからない。

気にせず自転車に2人乗りをすることができるのだ。





「お前ー!荷台乗っといて文句言ってんじゃねー!」





桜木風磨が運転する、彩穂を乗せた自転車は左右に大きく揺れた。




彩穂は、心は固定されているのに、その周りの体だけがふわっと浮くような感覚がして、自転車から落ちないように慌てて風磨の服の袖を握り締める。
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