あの頃より きっと。
雷に触れている頬から、雷の首筋を伝って体温が届かないか心配だった。
「あの…でも…」
その時彩穂は、大切なことを思い出して小さな声で呟く。
「風磨のこと思い出した?…ごめん。でも…今だけでいいからさ…風磨のこと忘れてくれよ」
雷は、静かにそう言った。
雷の心情を察し、頷いた。
まさか雷が自分のことを好きなはずはない。
でも、恋愛対象として見ていなくても、支えになって欲しいという位の悩みがあるのだろう。
彩穂は雷の腕の中で、そんなことを考える。