あの頃より きっと。
彩穂は、風磨の驚いた顔に向かって唇を噛んだ。
体育館で練習をしていた他の部員たちには、聞こえていないようだった。
誰もこちらを振り向かない。
風磨はその様子を確認して誤解されないことを悟ると、彩穂に目線を合わせる。
「悪かったな」
文章にしてしまえば、この言葉は彩穂を気遣っているように思えるだろう。
でも、実際は違った。
風磨は、彩穂を睨みつけていた。
「俺、なんか悪いことしたのかよ。いきなり馬鹿はねぇだろ」
風磨はそう言って、彩穂に背中を向けた。