あの頃より きっと。
麻紀はそっと手を離し、お弁当の中に入っていたミニトマトを口に入れた。





「麻紀お願い!勉強教えてください!」





「悪いけど、無理だわ…」





彩穂が、ですよねぇ、と頷くと背後から声がした。





「売店からただいまー!」





その声は楠木美優だった。

美優は、『いかにも女子』という単語が当てはまる。

可愛いものやピンクのものが大好きな美優の声は鼻にかかった高めのトーンで、顔は抜群の可愛さ。

ゆるくウエーブがかかった髪の毛は、肩を超える程度の長さで、片方でふんわりと結んである。

可愛いものが好きな美優は、自分のことも好きだ。

仕草や話し方でそれが分かるが、なぜか憎めない。

そういうキャラだ。

スキップ混じりにやってくる美優は、周りに花が咲いているようにふわふわしていた。
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