アシタのナミダ
病室の外で物腰の柔らかい中年と若い女性の警官を見送る母の姿は、閉まっていく扉で遮られた。
「ジュリエ、少しいい?」
その母が扉から顔を覗かせる。
「どうしたの?」
極力私は明るい声で言った。
「トキオ君のお母さんが、話したいんだって」
そう言ってトキオの母を招き入れる。
「何か、飲み物買ってくるね」
会釈をして母は出ていった。
「ジュリエちゃん。トキオの所為でこんな事になってしまって、………ごめんなさい」
深く頭を下げる彼女は少し老けたように感じた。
「お母さん、止めて下さい。トキオは、何も悪くないんですよ」
誰かの所為だと言えばキリがない。
彼は誰を責める事もしなかった。
「だから、気に病まないで下さい」
それは自分にも言い聞かせる言葉だった。
「ありがとう。アナタのような子に出逢えて、あの子は幸せね」
眼を潤ませながら言う。
「これが、トキオの荷物から出てきたの。どうするかはジュリエちゃんが決めて。どんな結果でも、私達は受け入れるから」
彼女が差し出した封筒の中には、二つの指輪と一枚の薄い紙が入っていた。
婚姻届―――
いつも以上の丁寧さで並べられた文字が、隣の空欄を埋めてほしいと待っていた。
トキオの字をよく見たいのに、視界がぼやけて見えない。
これが、アナタの愛のカタチなのね。
「………ありがとう。トキオ―――」
「ジュリエ、少しいい?」
その母が扉から顔を覗かせる。
「どうしたの?」
極力私は明るい声で言った。
「トキオ君のお母さんが、話したいんだって」
そう言ってトキオの母を招き入れる。
「何か、飲み物買ってくるね」
会釈をして母は出ていった。
「ジュリエちゃん。トキオの所為でこんな事になってしまって、………ごめんなさい」
深く頭を下げる彼女は少し老けたように感じた。
「お母さん、止めて下さい。トキオは、何も悪くないんですよ」
誰かの所為だと言えばキリがない。
彼は誰を責める事もしなかった。
「だから、気に病まないで下さい」
それは自分にも言い聞かせる言葉だった。
「ありがとう。アナタのような子に出逢えて、あの子は幸せね」
眼を潤ませながら言う。
「これが、トキオの荷物から出てきたの。どうするかはジュリエちゃんが決めて。どんな結果でも、私達は受け入れるから」
彼女が差し出した封筒の中には、二つの指輪と一枚の薄い紙が入っていた。
婚姻届―――
いつも以上の丁寧さで並べられた文字が、隣の空欄を埋めてほしいと待っていた。
トキオの字をよく見たいのに、視界がぼやけて見えない。
これが、アナタの愛のカタチなのね。
「………ありがとう。トキオ―――」