アシタのナミダ
「心の後遺症。心的外傷後ストレス障害、PTSD。





つまり、心が傷付いているの。





不眠が続いたり、不安が強くなったり、何度も嫌な体験を心の中で繰り返す事があるから、一緒に治していきましょう」





そっと私の右手に、細く伸びる指の右手を重ねる。





懐かしい手だ、と思った。





「心のリハビリのようなものよ。アナタは気負わずリラックスして臨んでくれればいいから」





皮膚に伝わる温度はとても暖かく、脳裏に潜む後ろ姿が浮かぶ。





「先生?」





当てもなく彷徨う私の左手が寂しそうだった。





あの時を思い出す事がいけないのなら、





「それは、忘れるって事なの?」





全てをなかった事にしてしまえばいいの?





私達の出逢いも、一緒に過ごした時間も、全て。





「それは、アナタ自身が決める事よ」





重ねていた手を彼女は優しさで握った。





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