アシタのナミダ
「君は、祥子さんに似ているね」





坂木教授は突然母の名前を出して微笑んだ。





「それでは読み合せを始めます! キャストは集まって!」





脚本を担当した若間さんが召集している。





行かなきゃ。「母を、知っているんですか?」





そう思っているのに、動けなかった。





「ああ。彼女も僕も、この大学の生徒だったんだ」





だから母は進学に賛成したのだろうか。





「そう…だったんですか。知りませんでした」





「彼女は秘密主義だから」





そうですね、と私達は笑った。





その笑顔を見ていると、なぜか安らぎを感じたのを憶えている。





トキオに似た優しい、でもどこか寂しげな笑顔。





深い傷を負っていたのかもしれない。





トキオも心に埋まらない傷を持っていたの?




そんな事は何も話さなかったトキオは、私を信用していなかったんだろうか。




きっと、違うよね。私を不安にさせたくなかったんだよね。




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