金色の陽と透き通った青空
第31話 金色の陽と透き通った青空の向こうには
ゆらりゆらり……。軽井沢のガーデンハウスの煙突から上る白い煙……周辺に漂う甘い焼き菓子の香り。
『OPEN』のプレートの下がった、木の枝風の持ち手に、重厚なロートアイアンの金具の付いたブルーの板壁風ドアががチャリと開いて、5歳ぐらいの男の子が出てきた。手には大きなバスケットを抱えている。その後ろに妹らしき3歳ぐらいの女の子が、男の子のシャツの後ろの裾を掴んで、まるで電車の連結器の様に繋がってくっついていく。
「転ばないように気をつけるのよ」
お店の中から杏樹の声がする。
「うん。大丈夫!!」
「うん。だいじょうぶ〜」
お兄ちゃんの声に重なりあうように、妹も返事をする。
2人は、ガーデンハウスから庭の奥に延びた赤いレンガの小道を、トコトコと歩いていく。回りには青々としたカバープランツに、白樺やブナの木が程よい間隔で生えていて、鮮やかな緑の葉の隙間からキラキラとした木漏れ日が射し込んでくる。
野生化したラズベリーやクランベリー、ブルーべーリー、キウイや山ぶどう、ワイルドストロベリーなど、その季節毎に実る果実が、赤レンガの小道脇に自生しており、時々バスケットを下ろしては、子供達が道の途中で小鳥の様に果実を口に入れる。今の季節はラズベリーが赤々と食べ頃だ。兄は、妹の背の届かない所に生えているラズベリーを摘んで妹に差し出し、妹はそれを口にポイと放り込む。
ラズベリーに夢中になっていたら、隣の花木に大きな立派なクマバチがやってきて、2人は飛び上がる。
兄の方が指を口に当てて、妹に『シーッ』と騒がないようにジェスチャーで指示を送る。妹の方は、目を真ん丸にして泣きそうな顔をしながらコックリ頷く、そしてゆっくりゆっくり離れて、暫くしてから2人で大きな悲鳴を上げ、それから笑いあった。
そして兄の方はまた大きなバスケットを抱えて、妹の方は兄のシャツの後ろの裾を掴んで、レンガの小道を森の奥ヘ奥へと進んでいった。
途中には小さな浅い小川と手作りの木の橋があり、バスケットを置いて、2人で並んでしゃがみ込んで水の中を覗き込む。
「あ……。いた!!」
「あ〜なんだろうこれ?」
クスクスと顔を見合わせて笑いあい、少しの間観察してから、また2人は連結器になって赤レンガの道を歩き始めた。
やがて、木を電鋸で切る『キーン』という音が聞えて来て、作業小屋として使われている大きなログハウスの工房が見えて来た。
兄は、ログハウスのウッドデッキにある大きなガーデンテーブルの上に、大きなバスケットを置くと、ログハウスの扉外にあるチャイムを鳴らす為の紐を妹と交互に引っ張って中に居る父親に合図を送る。
子供達には危ない機械が沢山あるから、中に入ってはいけませんと言ってあるので、用事のある時にはこうやって中に居る父親に知らせるのだ。
部屋のドア内側にはアイアンベルが付いていて、その紐を引くとカラコロと大きな音がして、子供達がやってきた事を知らせる合図になる。
やがてガチャリと扉が開いて、汗を拭き拭き、すっかり逞しくなった智弘が中から出てきた。
「パパお昼持ってきたよ〜」
「もってきたよ〜」
2人でウワッと父親に飛びついて、智弘は片手ずつ子供を抱き上げて、ログハウス脇にある手洗い場に歩いていった。
「2人共、手と口が真っ赤だぞ!!寄り道して木苺を食べて来たな。あまり食べ過ぎるとお腹が痛くなるし、お昼ご飯が入らなくなるぞ!!」
2人の真っ赤になった口の回りを見て、智弘は苦笑した。
「5つまでにしたから、大丈夫だよ!!」
「そうか?じゃあ大丈夫かな」
「うん」
兄の方は、自分で顔と手を洗い、智広からタオルを受け取ってゴシゴシ拭いた。
「あのね。おっきなハチがいた」
妹の方は、智弘に手と顔を洗ってもらって、拭いてもらいながら、目を真ん丸にして真剣な顔で言った。
「あれはクマバチだよ!!」
兄の方も、さっきの恐怖を思い出したように、真顔で智弘に訴えた。
「それは危なかったな!!絶対に大きな声を出して騒いじゃ駄目だぞ!!静かにそっと離れれば、襲ったりする事は滅多にないからネ」
「うん」
「うん」
2人は大きく頷いて、それぞれ左右に別れて、智弘の手に繋がれて、ガーデンデッキに向った。
「今日のお昼は何かな?」
「あのね、ママがサンドイッチだって言ってた」
「アンナ、ママのサンドイッチ大好き!!」
「パパ、さっき川に変な生き物がいた」
「じゃあお昼ご飯の後に一緒に見に行こうか」
「うん」
「うん」
3人の笑い声が森の木立に木霊した。
『OPEN』のプレートの下がった、木の枝風の持ち手に、重厚なロートアイアンの金具の付いたブルーの板壁風ドアががチャリと開いて、5歳ぐらいの男の子が出てきた。手には大きなバスケットを抱えている。その後ろに妹らしき3歳ぐらいの女の子が、男の子のシャツの後ろの裾を掴んで、まるで電車の連結器の様に繋がってくっついていく。
「転ばないように気をつけるのよ」
お店の中から杏樹の声がする。
「うん。大丈夫!!」
「うん。だいじょうぶ〜」
お兄ちゃんの声に重なりあうように、妹も返事をする。
2人は、ガーデンハウスから庭の奥に延びた赤いレンガの小道を、トコトコと歩いていく。回りには青々としたカバープランツに、白樺やブナの木が程よい間隔で生えていて、鮮やかな緑の葉の隙間からキラキラとした木漏れ日が射し込んでくる。
野生化したラズベリーやクランベリー、ブルーべーリー、キウイや山ぶどう、ワイルドストロベリーなど、その季節毎に実る果実が、赤レンガの小道脇に自生しており、時々バスケットを下ろしては、子供達が道の途中で小鳥の様に果実を口に入れる。今の季節はラズベリーが赤々と食べ頃だ。兄は、妹の背の届かない所に生えているラズベリーを摘んで妹に差し出し、妹はそれを口にポイと放り込む。
ラズベリーに夢中になっていたら、隣の花木に大きな立派なクマバチがやってきて、2人は飛び上がる。
兄の方が指を口に当てて、妹に『シーッ』と騒がないようにジェスチャーで指示を送る。妹の方は、目を真ん丸にして泣きそうな顔をしながらコックリ頷く、そしてゆっくりゆっくり離れて、暫くしてから2人で大きな悲鳴を上げ、それから笑いあった。
そして兄の方はまた大きなバスケットを抱えて、妹の方は兄のシャツの後ろの裾を掴んで、レンガの小道を森の奥ヘ奥へと進んでいった。
途中には小さな浅い小川と手作りの木の橋があり、バスケットを置いて、2人で並んでしゃがみ込んで水の中を覗き込む。
「あ……。いた!!」
「あ〜なんだろうこれ?」
クスクスと顔を見合わせて笑いあい、少しの間観察してから、また2人は連結器になって赤レンガの道を歩き始めた。
やがて、木を電鋸で切る『キーン』という音が聞えて来て、作業小屋として使われている大きなログハウスの工房が見えて来た。
兄は、ログハウスのウッドデッキにある大きなガーデンテーブルの上に、大きなバスケットを置くと、ログハウスの扉外にあるチャイムを鳴らす為の紐を妹と交互に引っ張って中に居る父親に合図を送る。
子供達には危ない機械が沢山あるから、中に入ってはいけませんと言ってあるので、用事のある時にはこうやって中に居る父親に知らせるのだ。
部屋のドア内側にはアイアンベルが付いていて、その紐を引くとカラコロと大きな音がして、子供達がやってきた事を知らせる合図になる。
やがてガチャリと扉が開いて、汗を拭き拭き、すっかり逞しくなった智弘が中から出てきた。
「パパお昼持ってきたよ〜」
「もってきたよ〜」
2人でウワッと父親に飛びついて、智弘は片手ずつ子供を抱き上げて、ログハウス脇にある手洗い場に歩いていった。
「2人共、手と口が真っ赤だぞ!!寄り道して木苺を食べて来たな。あまり食べ過ぎるとお腹が痛くなるし、お昼ご飯が入らなくなるぞ!!」
2人の真っ赤になった口の回りを見て、智弘は苦笑した。
「5つまでにしたから、大丈夫だよ!!」
「そうか?じゃあ大丈夫かな」
「うん」
兄の方は、自分で顔と手を洗い、智広からタオルを受け取ってゴシゴシ拭いた。
「あのね。おっきなハチがいた」
妹の方は、智弘に手と顔を洗ってもらって、拭いてもらいながら、目を真ん丸にして真剣な顔で言った。
「あれはクマバチだよ!!」
兄の方も、さっきの恐怖を思い出したように、真顔で智弘に訴えた。
「それは危なかったな!!絶対に大きな声を出して騒いじゃ駄目だぞ!!静かにそっと離れれば、襲ったりする事は滅多にないからネ」
「うん」
「うん」
2人は大きく頷いて、それぞれ左右に別れて、智弘の手に繋がれて、ガーデンデッキに向った。
「今日のお昼は何かな?」
「あのね、ママがサンドイッチだって言ってた」
「アンナ、ママのサンドイッチ大好き!!」
「パパ、さっき川に変な生き物がいた」
「じゃあお昼ご飯の後に一緒に見に行こうか」
「うん」
「うん」
3人の笑い声が森の木立に木霊した。