ひきだしから、男子!
声をひそめて話し
て、透は泣きそうな
顔になった。
鼻の頭を赤くしてう
つむく。みかこが、
透の頭をぽむぽむ叩
く。戸惑う牡丹の胸
に、静かな理解が落
ちた。
透は畑山君のことが
好きなんだ。
「気のせいだよ。
あたしべつに好きじ
ゃないし、好かれて
もないから」
「ううん」
透は涙をふきながら
笑った。
「違う。それに、
牡丹だって、いつも
畑山君のこと見てる
じゃん。自分の気持
ちに気づいてないだ
けだよ。素直になっ
てよ」
牡丹はハッとした。
自覚がないからだ。
しかし、それはたぶ
ん気になるからであ
って、べつに好きだ
からってわけじゃな
い。