ひきだしから、男子!
それによると
『ちさ』は、
レタスの和名
らしい。
水溜まりを
パシャパシャ踏んで
歩く。
電気の消えたうちの
窓が、見えてきた。
母親は今日もパート
だ。
鍵をだして門扉に手
をかけた時、耳慣れ
た声に呼ばれた。
唾をのんで、
振り返る。
ビーズののれんみ
たいな雨の向こう
に、背の高い男子が
立っていた。怒った
ような顔を、してい
る。
牡丹は目を見開き、
フリーズした。何か
言われるのを予想し
て身構える。
彼は傘を傾け、牡丹
から
目線をそらした。
何か探すようにあち
こち見回してから、
いいものを見つけた
とばかりに、電信柱
をじっと見つめた。