ひきだしから、男子!

 Bに似て

 Bとは違う、

 教室で見るのとも違

 う、初めて目にする

 畑山智佐(ちさ)の

 笑顔だった。

 「じゃ、じゃあな。

 また、ゲームやろう

 な。

 今度は勝つから! 

 キャベツなんか

 こっぱ微塵にしてや

 る」

 畑山は早口で言っ

 て、傘を放り出

 し、雷雨の中を走っ

 ていった。

 「ゲームって……」


 ザッと雨の音が急に

 強く聞こえ始めた。

 傘を持つ手が、震え

 る。涙があふれ出し

 てくる。牡丹はあま

 りの嬉しさに傘を投

 げ飛ばした。

 「Bの記憶が
    あるんだ!」

 雨に打たれながら、

 大笑いする。

 そして、ふいに顔を

 赤らめた。

 「キャベツが
  かわいいっ
     て……」

 ぎくしゃくしながら

 傘を拾う。

「葉牡丹がキャベツ

 の一種?」

< 168 / 200 >

この作品をシェア

pagetop