☆空色の傘☆【完】
麗香のお母さんが花瓶を持って入ってきた。
「あ、お邪魔してます」
「あらぁ、お邪魔じゃないわよ、
毎日ありがとうね。
転院するってなったときは…
辛い思いを余計にさせてごめんなさいね」
「いえ…麗香が…直るためなら
俺は待てますから。」
「ありがとう、ほんと、
酒井くんが居てくれて
私達助けられてるのよ」
「いえ…そんな…」
麗香のお母さんは花瓶を枕元の棚に置くと、俺とは反対側の、窓側に回り椅子にかけた。
「一昨日…麗香には
みんなの、酒井くんの楽しそうな声が
聞こえたのね、きっと。
あたしも入れてよって、
言いたかったのかな… 」
そう話ながら俺が繋ぐ左手とは逆の右手を布団から出してポンポンとする。
それに合わせて俺も、左手を握る力を少しだけ強くした。
すると…
またピクッっと、甲に当たる麗香の指が動いた。
「あ…お母さん…また、
今、指が動きましたよ…」
「まぁ!麗香?聞こえる?
ママよっ!麗香ちゃん?」
右手をポンポンしながら呼びかける。
ちょうどその時、窓から入る陽射しが急にスゥ~っと伸びて光がまるで麗香に向かってくるように見えた…
「麗香っ!」
俺は椅子から立ち上がり、手を握りしめながら麗香の顔を見つめた。