☆空色の傘☆【完】


見つめていたのはたった数秒だったと思う。


けれどかなり長い間だった気もする。


ゆっくり…本当にゆっくり…


麗香のまぶたが動き出したんだ…


「麗香ちゃん…?」「麗香…」「あ…」


3人の声がほぼ同時に重なった。


後で思えば、お母さんには悪かったなと思うけど、その時の俺にはただ、麗香を感じたくて抱き締めていたんだ。


「麗香…っ」


寝たままの麗香に覆い被さるようにして、麗香の頭が俺の首辺りにきてるような格好で布団と背中の間に腕を無理矢理通してギュッと…抱き寄せた…


お母さんはその時にナースコールしたみたいだった。


俺の腕のなかで微かに動く麗香。


そして…


「亮…」


小さな声で、でも確かに俺を呼んでくれた。


いつの間にか俺は泣き笑いの状態で、麗香のベッドにポタポタと涙がシミを作る。


でも、口元は嬉しさが堪えきれずに自然と緩んで「ハハハッ…」なんて声まで出てた。


麗香の右側からは、「良かった…ほんとに良かった…ウゥゥッ…」と独り言のように繰り返すお母さんの声が聞こえてた。


「亮…はな、水…
フフフッ…ゥゥ…ンウッウッ…」


麗香も笑ってるんだけど、込み上げるものが我慢出来ずに喉をつまらせる。


医師たちが駆けつけるまでの間、病室内は泣き笑いの音で溢れてた。


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