☆空色の傘☆【完】
俺を押し倒さんばかりの勢いで絡み付いてきて、脚を踏ん張るのも大変だった。
達馬も慌てて、俺と中谷の姉らしい女を離そうとしてくれる。
だが、もともと照れ屋な達馬が女性の体をガシッと、ところ構わずつかむ、なんてことは無理がある。
周りもワタワタしてる、その時、その女の唇が俺のに触れた。
俺は息をついたところで、開いていた唇に何が触れた?と考える間もなく、舌が入り込み、一瞬の呆然の間に舌を絡めとられてディープキスをされていた。
我に還ったのは、きっと5秒も経ってはいなかったはず…、そうして、懸命の力で女を引き剥がし、押し退け、唇を手の甲でゴシゴシこする。
その、瞬く間の出来事が、ゴドッ…という、何が落ちた音によって、現実として動き出す。
「ふっ…ふふふっ!!
あんたたちもダメになればいいっ!
自分たちだけが幸せなんて、
絶対にあたしが許さないっ!」
女が笑いながら叫び、視線を移した先には、驚いた顔の蒼が、ペットボトルを落としたまま、こちらを見ていた。
その少し後ろには気まずそうな中谷さんが居た。
「蒼っ!」
俺は直ぐに蒼に駆け寄る。
そして手をひいて、トイレに向かった。
無言のままの蒼としっかり手をつなぎ直して、トイレの手洗い場で片手で顔、特に口をゴシゴシと洗った。