☆空色の傘☆【完】


ただ、今回は運が味方したのか、極々初期で見つかり、転移もしていなかったって。


幼児から高齢者までみられるガンだが、Ⅰa期と言われる段階で発見できた蒼は幸運だったと言えるだろう。

蒼は片方の卵巣を摘出してしまったらしいが、妊娠は可能なんだって。


そして幸いにも6年間、再発、転移は確認されてないってこと。


それでも、約半年に一回は検査をうけ、副作用は少ないがここ数年はピルを服用しているそうだ。


普段、蒼が薬を飲んでいるのは気がつかなかった。


「今日は検査日…だったの」


そう、静かに言って少し疲れた顔を見せた。


疲れやすい、風邪をひくと長引く、食が細い、貧血ぎみなどは体調やピルなどによるものもあるらしく、人より気を付けなければならないが、今までひどく困ることはなかったんだと、付け足す。


陸也は花火大会の日の、手が離れてしまったことに、罪悪感と後悔と……相当に感じたんだろう。


今まで以上に蒼に対して甘く優しい兄になってくれて、それが、傍で過ごしていて辛いんだって今にも涙が溢れそうな瞳で言った。


陸也の過保護っぷりにはそんな事情があったのかと、俺も苦しくなった。


今日慌てたのはきっとあまり知られたくないから…蒼がまた、気にやんでしまうから…でも、自分も今日の結果を気にしてて挙動不審になったんだろうな。



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